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札幌地方裁判所 昭和61年(わ)23号 判決

本籍

札幌市豊平区月寒東一条六丁目五七三番地

住居

同市同区月寒東一条六丁目三番二四号

会社役員

谷口雅樹

昭和二〇年八月三一日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官八幡錐及び弁護人渡辺英一、同日浦力各出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年及び罰金一二〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、昭和五五年五月ころから昭和五七年一二月末ころまで札幌市豊平区月寒東一条六丁目三番二四号所在の幸恵マンション一号室で、その後同区月寒西一条一〇丁目四番一二号所在の平尾ハイツ二〇五号においてゲーム機リース業等を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、ゲーム機のリース等による収入を架空名義の普通預金口座に預け入れるなどの方法によりその所得を秘匿したうえ、

第一  昭和五六年分の実際総所得金額が四六三二万八二五八円(別紙(一)修正損益計算書参照)であり、これに対する所得税額が二一四四万〇六〇〇円(別紙(三)ほ脱税額計算書参照)であったのにかかわらず、右所得税の確定申告による納付期限である昭和五七年三月一五日までに、札幌市豊平区月寒東一条五丁目三番四号所在の所轄札幌南税務署の税務署長に対し、所得税確定申告書を提出しないで右期限を徒過させ、もって不正の行為により昭和五六年分の所得税額二一四四万〇六〇〇円を免れ、

第二  昭和五七年分の実際総所得金額が四三七六万九三七三円(別紙(二)修正損益計算書参照)であり、これに対する所得税額が二〇三二万四二〇〇円(別紙(四)ほ脱税額計算書参照)であったのにかかわらず、右所得税の確定申告による納付期限である昭和五八年三月一五日までに、前記札幌南税務署長に対し、所得税確定申告書を提出しないで右期限を徒過させ、もって不正の行為により昭和五七年分の所得税額二〇三二万四二〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部について

一  被告人の当公判廷における供述

一  第一回公判調書中の被告人の供述部分

一  被告人の検察官に対する供述調書三通

一  被告人の収税官吏に対する質問てん末書一七通

一  谷口直武及び今野了の検察官に対する各供述調書

一  谷口直武(二通)及び今野了の収税官吏に対する各質問てん末書

一  佐藤浩外一名作成の上申書二〇通(昭和六〇年一〇月一五日付、同月一八日付(水道光熱費に関するもの)、同日付(通信費に関するもの)、同日付(接待交際費に関するもの)、同日付(損書保険料に関するもの)、同日付(改造費に関するもの)、同日付(福利厚生費に関するもの)、同日付(旅費交通費に関するもの)、同日付(車両費に関するもの)、同日付(負担金に関するもの)、同日付(給料賃金に関するもの)、同日付(家賃に関するもの)、同日付(支払利息に関するもの)、同日付(雑費に関するもの)、同月二二日付(三通)、同月二八日付(三通))

一  検察事務官作成の「報告書」と題する書面

一  札幌南税務署長齋藤英郎作成の「申告所得税の納付状況照会に対する回答」と題する書面

一  収税官吏作成の収入金額の調査書、水道光熱費調査書、通信費調査書、接待交際費調査書、損害保険料調査書、改造費調査書、福利厚生費調査書、旅費交通費調査書、車両費調査書、負担金調査書、給料賃金調査書、減価償却費調査書、貸倒金調査書、家賃調査書、支払利息調査書、雑費調査書、利子所得調査書、雑所得調査書及び預金調査書

一  収税官吏作成の調査事績報告書七通(同年九月五日付、同年一一月七日付、同年一二月一六日付(二枚綴り)、同日付(三枚綴りで貸付金残高調に関するもの)、同日付(四枚綴り)、同日付(六枚綴り)、同日付(三八枚綴り))

一  収税官吏作成の差押てん末書三通

一  収税官吏作成の領置てん末書二通

一  押収してあるメモ等綴一綴(昭和六一年押第一二七号の1)、同印章二四本(同号の2、8、9、10、11、12)、同ノート六冊(同号の3、4、14)、同借用証書等綴一綴(同号の5)、同建物賃貸借契約書綴一綴(同号の6)、同金銭貸借契約書等綴一綴(同号の7)、同メモ綴五綴(同号の13)、同勝馬投票券等綴四綴(同号の15)、同金銭借用証書二通(同号の16)、同白色申告書類つづり一綴(同号の17)、同連帯借用証書二通(同号の18)及び同小切手一通(同号の19)

判示第一の事実について

一  収税官吏作成の譲渡所得調査書

判示第二の事実について

一  佐藤浩外一名作成の昭和六〇年一〇月一八日付上申書(権利金の償却に関するもの)

一  収税官吏作成の繰延資産償却費調査書及び不動産所得調査書

一  収税官吏作成の同年一二月一六日付調査事績報告書(三枚綴りで昭和五七年分ゲーム機の減価償却費に関するもの)

(確定裁判)

被告人は、昭和五八年三月一四日札幌地方裁判所岩見沢支部で常習賭博罪により懲役一〇月(三年間執行猶予)に処せられ、右裁判は同月二九日確定したものであって、この事実は検察事務官作成の前科調書によって認める。

(法令の適用)

被告人の判示各所為は、いずれも所得税法二三八条一項に該当するところ、右各罪につきいずれも所定の懲役と罰金を併科し、かつ情状により同条二項を適用し、以上の各罪と前記確定裁判のあった罪とは刑法四五条後段により併合罪の関係にあるから、同法五〇条によりまだ裁判を経ていない判示各罪について更に処断することとし、なお右の各罪もまた同法四五条前段により併合罪の関係にあるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一年及び罰金一二〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする(求刑懲役一年及び罰金一五〇〇万円)。

よって、主文とおり判決する。

(裁判長裁判官 吉本徹也 裁判官 嶋原文雄 裁判官 渡邊雅道)

別紙(一) 修正損益計算書

谷口雅樹

自 昭和56年1月1日

至 昭和56年12月31日

〈省略〉

別紙(二) 修正損益計算書

谷口雅樹

自 昭和57年1月1日

至 昭和57年12月31日

〈省略〉

別紙(三)

ほ脱税額計算書

自 昭和56年1月1日

至 昭和56年12月31日

谷口雅樹

〈省略〉

税額の計算

〈省略〉

(注1) 番号3は、1,000円未満切捨て(国税通則法118条1項)

(注2) 番号7は、100円未満切捨て(国税通則法119条1項)

(注3) 番号5は、昭和56.11.17法律90号「昭和56年分所得税の特別減税のための臨時措置法」第4条による減税額(本件の場合-500円×本人)

別紙(四)

ほ脱税額計算書

自 昭和57年1月1日

至 昭和57年12月31日

谷口雅樹

〈省略〉

税額の計算

〈省略〉

(注1) 番号3は、1,000円未満切捨て(国税通則法118条1項)

(注2) 番号6は、100円未満切捨て(国税通則法119条1項)

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